DSA, CTA, MRA等で撮影した脳血管の3次元画像データ(DICOM)から脳動脈瘤とそれに付随する脳血管を実寸大モデルで作成します。脳動脈瘤のサイズや形状、発生個所を文字通り“手に取って”把握することができます。コイル塞栓術を行う際のマイクロカテーテルのシェイピングにも有効に利用することが可能です。
・血管内腔が"埋まった"状態のシンプルなモデル
・造影剤(血液)が流れた領域を立体化
・血管内腔を再現したモデル
・シェイプ後マイクロカテーテルのフィット性の確認等に利用可能
・内腔ありモデルの血管に沿って約1/4の切り込みを入れたモデル
・治療用デバイスのテストに使用可能
脳動脈瘤の発生箇所によりモデル化される領域は異なります。目安としてはそれぞれ以下のとおりです。
これ以外の箇所に発生した脳動脈瘤については個別に対応致します。
DSA, CTA, MRA等で撮影した脳動脈瘤の画像をもとにモデルを作成します。DICOMと呼ばれる形式で保存されいる脳動脈瘤をスライス状に撮影した医療用画像専用ソフトウェアを用いて3次元に再構成します。不要な血管やノイズ等を除去し、データ変換を行うことで脳動脈瘤のSTLデータを作成します。このSTLデータをもとに3Dプリンターで脳動脈瘤モデルの造形を行います。
脳動脈瘤内にコイルを挿入するコイル塞栓術ではカテーテルの位置が重要になります。例えば、左図のような脳動脈瘤では、カテーテルを血管壁に一度接触させ、カテーテルの先端を脳動脈瘤の中心部分に来るようにします。このようにすることで、カテーテルが安定して設置され、コイル挿入時にカテーテルが跳ね返って脳動脈瘤の外側へと飛び出すようなことが起きにくくなります。
カテーテルの位置がしっかりと定まっているとコイル塞栓術を効率よく行うことが出来ます(コイルを無理なく沢山詰めることが可能となります)。このような効率的なコイル塞栓術を行うためにマイクロカテーテルのシェイピングが行われます。シェイピングとは文字通り、カテーテルに“形付け”を行うことで、下記図に示すような手順で行われます。
従来のコイル塞栓術ではマイクロカテーテルのシェイピングをモニター等に映した画像をもとにして行っていました。しかしながら、これでは脳血管の奥行きや実際のサイズ感を把握することが困難であり、上手くシェイピングを行うためには、ベテラン医師による熟練の技術が必要とされてきました。
脳動脈瘤とそれに付随する脳血管を、最新式3Dプリンターを用いて印刷することにより、実寸大の実形状に合わせたシェイピングを行うことが可能となります。これまで熟練の技術が必要とされてきたマイクロカテーテルのシェイピングを、誰もがよりスピーディかつ正確に行えるようになります。また、脳動脈瘤を有している患者様にとっても、自分の目では見えない部分にどのようなものが出来ているのかを“手に取って”把握することが可能になります。
2016年には3Dプリンターを使用したマイクロカテーテルのシェイピングの有用性に関して英学術論文に報告がなされています。(Ishibashi T, et al., “Tailor-made shaping of microcatheters using three-dimensional printed vessel models for endovascular coil embolization.”, Comput Biol Med, 2016 Oct 1; 77:59-63.)